その場所の居心地

備忘録と考えたこと

【舞台】『Sleep No More』が最高Moreだった10のあるある、はやく言いたい

はい最高。

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こうきて

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これもんの

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こう来て、からの!

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こう行きのの!!

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どーーーん ぱーーーーーーーーーーーん

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あばばばばばばばばばばばばばば

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さて。

 

 

最高でしたか?

最高でしたね?

 

www.youtube.com

 

というわけで、

SLEEP NO MOREですよ!奥さん!

mckittrickhotel.com

 

以上。NY行きましょう。

 

 

…で終わってもいいんですが、個人的に喋りたいんで続けます。

 

 

SLEEP NO MOREとは?

NYはブロードウェイにおいて、いわゆるオフブロードウェイ公演(小規模の劇場で観客数の少ない公演)として異例の人気を誇りロングランを続けている公演です。主催カンパニーはイギリスのPunchdrunk

と、ここまでの説明だと単にセンスのいい小カンパニーによるイケてるお芝居かな?という感じですが、もちろんそれでは終わりません。この公演、上演場所、上演形式、鑑賞方法などなど全てにおいて異例づくめ。ある意味従来の観劇とは全く別種の体験を全身で感じさせてくれる公演なのです。

そんなSNMの「ここがスゴイ!」を一旦箇条書きでまとめます。

 

  • 舞台となるのはNYチェルシーの巨大な廃ホテルの5フロア全て(!)

  • 俳優たちは各フロアを縦横無尽に横断しながら、シェイクスピアの「マクベス」をベースにした各シーンを同時多発的に上演。

  • 観客たちは入場とともに配られる仮面を被り、物語の中の「亡霊」として廃ホテルを徘徊しながら、時系列に縛られない物語の断片を、悪夢の中を彷徨うように偶発的に体験していく

 

…ね。

すごくないですか?

 

基本的にノンバーバル(セリフなし)のこの公演。

全ての表現は出演するパフォーマーの身体表現によって行われます(メチャ雄弁)。

激しい愛憎、悲喜劇、混乱、闘争、悪魔の誘惑、禁断の情事。

そんなものがバッシバシと目の前で展開していくわけです。

 

端的に言って、夢みたい。それが素直な感想でした。

 

もともと数年ほど前から噂は伝え聞いており、その革命的な公演形式を聞いてからはもう、行きてえ行きてえと各所でガナリ続けた挙句、「飛行機のチケットを買って乗ると、着く」という真実に最近気づき、買って乗って観てきたのでありました(自腹です)。

 

しかしこの公演、その奇抜な公演形式の面白さもさることながら、それ以上に「公演としてのディテールがものすごく丁寧」なんです。そうした体験設計としてのなめらかさ、どの瞬間も観客を夢から覚させないように計算されたそのホスピタリティにむしろ心を打たれました。

 

実際に体験して、私が「あーもうこういうところ格別に最高!」と思ったところを後学のためにまとめておこうと思います。だってこれ、舞台であれなんであれ、「人を一箇所に集めてなんかするイベント」を打つ場合絶対参考になるから。よかったら何かの皆さんも参考にしてくださいね。サプライズ告白とかに使えるかもよ。オススメしないけど。

 

最高ポイントその1:受付からプチイリュージョン

さて、では早速、開場前から受付、ウェイティングバーへの導線、上演エリアへの移動について流れに沿ってご説明していきましょう。

これはイントロに過ぎないんだけど、むしろイントロが盛りだくさんなんだ。

前述の通り、公演場所はチェルシーにある廃ホテル。賑やかな中心部から少し離れた、やや寂しげなストリートに我々は集まり、列を作って公演を待ちます(VIPチケットだと並ばずに入れてドリンクと席のリザーヴ付き)。

公演時間になり会場に入っていくと、小さな電球が点々と照らすだけの仄暗く長い廊下が現れます。その先にある受付でリザベーションを確認し、料金を支払い。この時に、そのあと上演が行われるエリアへ入場する順番を決めるためのトランプのカードを渡されます。

このカードを配る単なる受付のボーイさんの手つきが、早速マジシャン風。

指先を上に差し出した手の甲を返すとパッ!と数枚のカードが開き、めいめいに好きなカードを選ばされます。で、最後の一枚になった人が取ろうとすると…

カード引っ込める〜〜〜(いじわる❗️)

そして懐から別のカード出してくる〜〜〜〜〜〜〜(なんかキュン❤️)

 

や、無意味なんですけどね。

でも、入って1分経たない間にエンタメかましてくるわけです。

このサービス精神たるや!!!!!

これから進んでいく先の空間への期待が無制限に昂まります。

 

最高ポイントその2:からの、いきなり迷路

そんな感じでマジックかまされたら、その後はすんなりウェイティングバーまで行けると思うじゃないですか。こっちとしては心の中の楽しみたい器官がすでにジュンジュンの状態ですし。階段も駆け上がるってもの。するとその先がまたしても真っ暗。手探りで歩いていくと、細い通路を右に折れ、左に折れ…何これ。

そう、ウェイティングバーまでのなんでもない導線に、小さな迷路が用意されてるのです。そしてこれが単なるお遊びでなく、テキメンに効果を生んでいる。

初めて行った場所で、短い距離とはいえあっちこっち移動させられると、完全に建物内での方向感覚を失います。そして照明はマジかというほど真っ暗。正直進んでてもめっちゃ不安になってくる。その混乱の中、若干心拍数が上がってきた状態で厚いカーテンを潜ると…?

 

いらっしゃいませ。

リアルデビッドリンチワールド、ウェイティングバーのお出ましです。

(ここまででだいたい10〜15分。てんこ盛りか。)

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ここに自分がいるのってあんま想像できなくないですか?いれちゃうわけよ。

 

最高ポイントその3:観客を誘う役者、プロ意識やばい

真っ暗な空間に慣れた目にぼんやりと映る、ロウソクの灯に照らされた妖艶な空間。

そう…そこは大人だけに許された、秘密のグランドキャバレー。

赤い緞帳、小さな舞台にレトロなバンドセットと漫才マイク(言い方)。スムースなJAZZが流れる中、ホスト&ホステスを演じる役者たちがギンギンのキャラ立ちぶりでそのパープルヘイズな空間の雰囲気を盛り上げます。

「ねえおニイさん飲んでってよ…アタシの酒が最高だって知ってるでしょ?」(意訳)的なセリフを身体をクネらせながら艶やかに吐く女性がいると思えば、舞台袖から出てきて「Ladies and Gentleman...」とおきまりの挨拶を始めるオールバックのヤク中みたいなボーイがいたり。そうした演劇的な存在が、目の前で、自分に向かって、当意即妙に、その演技スキルを惜しみなく披露してくるのです。なんたる贅沢!

その後ヤク中ボーイのアナウンスによって、受付で選んだカード番号による上演エリアへの移動が始まるのですが、今回一緒に行った友人が番号のコールを聞き逃し、その件を上演エリアの入り口でカードを確認している赤いドレスの女性に聞きに行きました。すると赤ドレス金髪さんは「ドンッ……パァニィィック…!(パニクらないでェ)」と、天一かな?というこってり口調でウィスパりながら、彼の背筋をさわ〜〜。コワモテで立ち向かった友人が風呂上がりみたいな顔で帰ってきました。よかったですね。

 

最高ポイントその4:アブサンカクテルがうまい

まあ、「演劇のロビーでお酒を飲む」みたいなこと自体は別に特殊なことではありません。ですが、ちゃんと世界観に合わせたカクテルがあって、そのバー自体が世界観の一部になっている。本当に微に入り細に入り、この公演では一つ一つのディテールが丁寧に積み上げられてい来ます。

すでにその世界観の中に身体が融けつつあった私は「ギムレットをもらおうか」的な気分だったので「ブルーギムレット」(実際はもう少し色っぽい名前だったはず)を、そして友人はアブサンベースのその名も「Green Monster」をオーダーしました。

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※「シュレックじゃねえわ」

 

アブサンは芸術家の愛した酒と言われるだけあって、あの場所の雰囲気に最適。ニガヨモギ(だっけ?)のいい感じの酩酊感と暗闇と赤いビロードの艶めきがいい感じにシェイクされて行きます。へっへっへ。

 

最高ポイントその5:とにかく現在地を曖昧にしようとしてくる

その後、例の赤いドレスの女性にカードを見せ、そこで仮面を渡され(ついに!)グループごとにいよいよ上演エリアへと移動します(ここまでで30〜40分)。

もうさ、ここまできたら「はい、あとはご自由にドゾー」でも全然いいじゃないですか。でもまだまだ演出は続きます。

観客はグループごとにカーテンの奥の新たな暗闇に誘導され、その間に誘導担当のタキシードのボーイから低い声でにマスクの着用や基本的なルールについて説明されつつ、通路の突き当たりに。すると背後で扉が閉まって…ともったいつけるほどでもないのですが、つまりエレベーターに乗せられるんですね。特に特殊なギミックはないものの、意味合いとしてはディズニーランドのホーンテッドマンションのアレだと思ってください。

初めての場所。唐突な迷路と暗闇。淡い光と真っ赤な空間。アブサンの酩酊…。そこにきてエレベーターに乗せられていきなり降ろされたら、もう完全に「え、ここドコ?」状態。完全に体内座標軸のシャッフル完了。そしてエレベーターの扉が開いたら、もう唐突にOPEN THE CURTAINです。もう眠れない。

ある人は点々と照らされたライトの列を頼りに、ある人は会場内に鳴り響く通奏低音を拠り所に、ある人は空間の中に垣間見える人影を見つけて…。

 

はい。自分だけの物語のスタートです。

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最高ポイントその6:暗いところが躊躇なく暗い

エレベーターもおそらくグループによってランダムな階で降ろされるのですが、灯りを頼りに徘徊しているとわりとすぐにパフォーマーたちを囲む人だかり(観客=亡霊)が見つかります。そこで彼らの美しい身体表現を間近に見つつ(当然最高)、ひとしきりシーンの表現が済むと、物語上の展開としてそれぞれのパフォーマーたちがその場を離れ、つぎのエリアに進んでいきます(例:殺人を犯したことを妻に慰められ床に就くが眠れず、ジャケットを羽織って夜の街に飛び出していく的な展開)。

となると、まだその場所に不慣れな我々ビギナー亡霊としては、当然メインっぽいパフォーマーを追いかけていくことになります。亡霊ズも走る俳優を見逃さないようにみんなでダッシュ!結構な運動量。

しかし、そんな感じでまあまあな人数が揃って走るにしては…暗い!あっちもこっちも暗い!階段とかマジで暗い。並みのお化け屋敷の2倍は暗いとイメージしてください。最暗部は手のひら見るのがやっとレベル。これ絶対ケガ人出してるだろうし日本じゃ消防法でアウトだなー、とここで小さいため息が出るわけですが。

でも、その暗さがいいんです。

この公演の主旨的に、「安全を考慮してヌルめのライトを常備」みたいな判断は全てを台無しにすることは間違いない。アメリカの消防法とか劇場法がどんなルールなのかは全くわかりませんが、それでもなんらかの特例措置を取ってるんじゃないかなと想像します。仮にそうだとしたら、演出効果のためにそうした交渉を辞さないクリエイティヴチームも許可を出す行政もマーベラス。これはほんと、少なくとも日本ではなかなかできることではありません。しかしその危険な暗さのおかげで、私たちはあらためて「これは自己責任でこそ楽しめるやつだ」というモチベーションを高めるのです

さあ亡霊たちよ、マクベスを追い詰めるのだー(誰)

 

最高ポイントその6:美術ががんばり屋さんにもほどがある

マクベスっぽい男を追ってフロアを駆け、要所要所で立ち止まりスリリングなダンス&寸劇を観、暗い階段を上へ下への大移動。だいたい立ち止まった時の立ち位置の具合で、つぎの移動の際に集団に押し出される形でどこかでお目当てのパフォーマーを見失います。さてどうするか。

大丈夫。どうもしなくていい。周りを観てごらんなさいな。

 

美術が鬼ヤバイから。

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これとか、特に物語上大きな動きのある場所でないちょっとした部屋のようすなんですよ。このレベルの美術の密度の小部屋がおそらく10〜20はある。なにそれ。

しばらくしてだんだん慣れてくると、今いる場所が何階で、どの階になにがあるか?などが把握できるようになってきます。そうした意識で各フロアを眺めて見ると…

数々の小部屋、ボールルーム、バーカウンター、ホテルのフロント、ベッドルーム、バスルーム、読書部屋、怪しげな現像室、迷いの森や墓場などの屋外空間を表現したエリア、などなど。最初に通されたウェイティングバーが丸ごと廃墟になったような場所もある。そして、それら全てがどこもかしこもこのクオリティ。

職業柄、その美術の規模を観てしまうと「予算 is...」と想像してちょっと青ざめてしまうのですが、そんな空間を自由に動き回れる酩酊感の中ではそんなの屁でもありません。ホックホク。

 

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思わず「映画"セブン"で観たことあります!!」と叫びたくなるこの感じ。

 

そして、その中のいくつかの空間には、明らかに「亡霊たちが手にして持ち帰る」ことを前提にしたものがバラまかれていたりします。短いメッセージの書かれたカード、手紙の一片、その他諸々。もちろんその他大量の小物も持って行こうとすれば持っていけてしまいますが、一応カバンなどは全てクロークで没収されるので、あまり大きなものを失敬することはできません。たぶん、やったらそこかしこにいる黒いマスクの誘導員たちにボコボコにされるんでしょう。

 

そう、上演エリアの暗がりにはかなり多くの誘導員たちがいるのです。そしてその誘導員たちの誘導スキルがこれまた素晴らしい。

 

最高ポイントその7:メリケンの黒子はとってもスマート

白い仮面は私たち観客(亡霊)。そして、黒い仮面は誘導員であることが初めのエレベーターで説明されます。

亡霊たちが文字通り彷徨い、入ってはいけない場所や演技の導線に当たる場所に踏み込もうとすると、どこからともなく黒仮面がやってきてさっと手で行く手を遮り、所定の位置に亡霊たちを誘導します。亡霊たちが本気で迷ったり気分が悪くなったりした場合にヘルプを伝えるのも彼ら。ただし、そういう緊急事態以外は基本的に一言も喋りません。

また、どうやら黒仮面だけでなく、亡霊を進行方向に先導するための「サクラ白仮面」もいる模様。彼らは私服に仮面なので観客と見分けがつきません。つくづくスマートよねー。

これ、日本だったら絶対に「動いてくださ〜い⤴️」「こちらで〜す⤴️」「入れませ〜ん⤴️」って感じのバイト口調で、誘導の確実性を優先してしまうはずです。先日後楽園遊園地で某奇妙な冒険をモチーフにした脱出ゲームイベントに家族で遊びに行ったのですが、まさにそんな感じ。この、良くも悪くも絶対の安全性よりも世界観を優先する判断に、この興行のすべてが私たち観客を「自分で判断できる大人」として扱っていることに気付かされます。それは興行側から観客への信頼に他なりません。こういうのたぶん欧米では当たり前だけど、国内だとなかなかないですよね。本当になぜなんだろう?

 

最高ポイントその8:音響めっさ計算されてる

もう8個めか。すでにこの時点で日本語ブログとしてはおそらく最も詳しいSleep no more(の序盤の)レビューになってる気がする。よし、キリがいいので10まで行きましょう。ちなみにもう十分以上に長いので巻いて行こう!

 

音響。そう、セリフはないですが無音ではありません。むしろ音はずっと鳴っている。それも結構な遠慮のない大音量で!鳴っているのは、基本的には「ゴオオオオ」という地鳴りのような強風のような低音。シーンによってはそれらに弦楽器の響きが加わったり、古い映画音楽が聴こえてくる場合もあります(あと電話のベルなどのSEも)。それらが空間内の各所に置かれているスピーカーから鳴り響いているのですが、どうやら演者たちはこの音の展開で館内全体の進行状況を把握しているっぽい。まあ当然そうだよなって感じだけど、きっかけづくりの説明をできる限り排除したこの方法はやっぱりとてもスマートでした。

また、観客の「移動」を前提とした時のこの音響設計の秀逸さ。

各空間で鳴り響く音は、全ての場所で同じ音源が鳴っているわけではありません。共通の低音がどこにいてもある程度耳に入るように配置されたスピーカーと、エリアごとの音を鳴らすためのスピーカーとが上手く混在しています。その空間の中を観客が移動していくと、何が起こるか。当たり前の話ですが、移動にシンクロして音が滑らかにクロスフェードしていく。この空間音響の気持ちよさ!

これ、地味な話だけど類似の体験を演出意図として体験したことってたぶん他にはありません。それこそフジロックとかでステージとステージの間で音混ざってんなーみたいなことはあったけど、それはたまたまであって狙いではなく、別に気持ちよさもない。

 

「音響の重なりが計算された空間を移動することはとても気持ちがいい」

 

この知見はきっといろんな空間設計に活かせるのではないかと。目ウロコならぬ耳ウロコ案件です。

 

最高ポイントその9:もちろん照明もすこぶる計算されてる

タイミングを音で取っていることがなんとなくわかると、当然照明もそれに合わせてなんらかのカウントを取っていることが想像できます。空間は広大だし、それぞれに照明さんがいていちいち目視してるとも思えない。演技的に大きく展開があるところは音楽にも展開があるので、動きの中でスポット的な照明が当たるところも、おそらく自動制御での変化に人間が合わせているのでしょう。よくできてるなー。

そして、そうした運用のシステム面だけでなく、いわゆる照明による演出も、ところどころ思い切りよくバシッと決めてきます。轟音とフラッシュライトで異空間にぶっ飛ばす表現もあれば、色の変化でちょっとした空気を変えるような表現もあり。

もうそんなのハナクソほじってても設計できるんだろうなーという余裕が感じられます。ブロードウェイがありハリウッドがある国のポテンシャル。スゴイですね。

 

最高ポイントその10:NYは遠い?そんなあなたに朗報です

というわけで、後半巻きつつ最後までやってまいりました。お疲れ様です。

Sleep No Moreの魅力はまだまだたくさんあります。というか、ほとんどのことは言語化が難しい、文字通り「体験」そのものの魅力です。

「わけわからない世界の中にいきなり放り込まれて、自力で彷徨って、暗闇の中に物語の断片を探す」。その体験は、こうして文字で読んで想像するものとはやはり違って、圧倒的な解像度と情報量を持って体験者の全身を包み込んできます。「五感で感じる」って普段軽々しくいうけど、まさにこれじゃん!という感じ(思えば匂いの演出はあんまりなかったかもだけど)。「状況」は説明できても、その場にいた「感じ」のディテールはもはや筆舌には尽くせません。

そして、そもそもの構成上、物語の全貌を把握することがとても難しい公演でもあります。マクベスを下敷きにしているということであらすじは把握して臨みましたが、そうした大筋よりもむしろ細かいシーンを断片として再現していると思われ、あらすじを読んだだけでは脳内パズルは全く組み上がりません。

多分、ちゃんとマクベスの原作に目を通し、一晩に3回ほどループしていると思われる全ての上演をOPENからCLOSEまでくまなく見て回れば、今回の私の体験とはまた違った密度でこの公演の全貌を「理解」できるでしょう。

 

でも正直…。「理解」、したくないなーと思ってしまった自分もいます。

 

このわけのわからなさをそのままに、「なんだったんだろう…」と言語化できなさを劇場から持ち帰る。それってなんて贅沢な演劇体験なんだろう。そんな風に思い、初めての観劇である今回はなんとなく「腹八分」ぐらいで会場を出ました。見てないシーン、見てない場所。たくさんあるっぽい。

 

なればこそ、また行くしかないじゃないか!と思うのです。

 

でもNYは遠くてね…と思ってるあなた(と私)。

おめでとうございます。

上海でもやってます!!!!!!!

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雰囲気違うけどこれはこれで。川崎にこういうゲーセンあるよね。

中国版のオフィシャルサイトはこちら。

The McKinnon Hotel

 

残念ながらチケットは9月末まですでに完売という大人気ぶりなのですが、多分延長するんじゃないかなと。10月以降についてはTBAということみたいです。

 

上海もいいだろうなー。

どんな場所かわからないけど、適度に淫美で怪しくて。

上海バンスキング的な世界観でもあるわけだし。

現地キャストではないだろうけど、それもまた観てみたい気が。

 

この記事を読んでビクンビクン来たみなさん、本当に上海行ってください。

観なければわからないものは観るしかない。

そして、観た人が騒ぐことで日本のパフォーミングアートの可能性も少しずつ広がるはずなんです。優れた作品を育てるのは優れた観客、ってやつです。あなたや私の経験が日本のアートの土台を作ります。

 

「もしこういう公演を日本の世界観でやるとしたら?」

ってやっぱり考えるじゃないですか。

そういうの観たくないですか?僕は観たい。

 

もしかしたら、いつかあなたと私がその公演に関わることになるかもしれませんね。

 

いやしかし、

 

あー面白かった!